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デジタルA型ラジオマイクが決まるまでの経緯と、今後について
1. 経緯
@ 1999年から2000年 社団法人電波産業会(以降ARIB)の規格会議小電力無線局作業班ラジオマイクワーキンググループ(以降ラジオマイクWG)にて、ラジオマイクの高度化の手段としてデジタル化の検討を行う。
A 2000年4月 ラジオマイクWGで報告書としてまとめる。 内容としては、音質と遅延時間の両方を満足することがこの時点での技術では難しく、技術的課題の抽出に留められた。
B 2003年2月 課題であった「音質・遅延時間の両立」が実使用に耐えられるレベルに達したと判断し、ラジオマイクWGで再び検討が始まる。
C 2003年9月から2004年12月 ARIB素材伝送開発部会地上無線素材伝送作業班(以降 地無素)にて、国内4社が実験局を提供する形で様々な実験を行う。
D 2005年2月 地無素にて実験結果を「特定ラジオマイク(A型)のデジタル化に関する実験報告書」としてまとめる。
E 2006年2月 Dの報告書をもとにラジオマイクWGにて「ラジオマイクのデジタル化に関する検討報告書」としてまとめる。
F 2006年6月 情報通信審議会「ラジオマイクの高度化に向けた技術的条件」の審議が開始される。(B型)
G 2007年1月 情報通信審議会に一部答申がなされる。(B型)
H 2007年8月 B型デジタルワイヤレスマイクが告示される。
I 2008年3月 情報通信審議会「特定ラジオマイクの高度化に向けた技術的条件」の審議が開始される。(A型)
J 2008年10月 情報通信審議会に一部答申がなされる。(A型)
K 2009年3月にデジタルA型ラジオマイクが告示される。
上記の経緯は、本レポートにて会員の皆様には逐次伝えてきた内容ではありますが、デジタル化の話が出てから法制化されるまでに10年という月日を要しました。
2. 今後
@デジタル化に伴うメリットデメリット
デジタル化することにより、干渉に強くなり同一場所での使用チャネル数の増加・近接エリアでの同一周波数使用距離の短縮・弱電界時におけるS/N比の確保、秘匿性・干渉発生時の異音発生の防止など多くのメリットがります。
また、FPUの1ch帯および3ch帯の使用が可能になり、デジタル方式に限っては1-4ch帯すべて利用可能になりました。また送信出力も50mWまで許可になり、より多チャネルに、より広範囲での使用が可能となりました。
しかしながらアナログデジタル変換、デジタルアナログ変換及び符号化で発生する伝送遅延・エリア限界における急峻な音質悪化・消費電流の増大などいくつかのデメリットがあります。
A実績を積んで前進させていく
現在、B型デジタルワイヤレスマイクは数社販売を開始しておりますが、デジタルA型ラジオマイクはどのメーカからも発売されておりませんが、近い将来発売が開始されることは間違いないと思われます。
いずれにせよ現在B型しか発売されていませんのでそれをもとにお話しするしかありませんが、現在の遅延時間でも多くの場面で使用できることが確認されつつありますので、普及する上で大きな支障になることはないと思われます。アナログ方式と今後は共存しながら緩やかに普及していくのではないかと思われます。
ただし、最大の課題である伝送遅延が、今後のデバイスの性能向上及びアルゴリズムの改良等により短縮されることは間違いなく、無視できる範囲になればデジタル方式に急速に切り替わるものと思われます。
特ラ連技術委員長 宮前真二

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