2017年3月1日 第155号  前 目次 次
ちょっとブレイク

出航編

有楽町の今は無き旧日劇を皮切りに芸術座、帝劇、シアタークリエと41年間、劇場勤務した東宝を昨年2月に定年退職し、只今、毎日日曜日、第二の人生漂流中です。

その昔、昭和の若かりし頃、有楽町の国電ガード下、歩道のビール箱に座り、頭上を山手線が100㏈の音圧で行ったり来たりする、界わいの劇場の役者や裏方が通う行きつけの安呑屋で、公演がはねた後、深夜まで、国電の騒音を上回る口角泡を飛ばしながら芝居の話や仕事の愚痴で二級酒を煽る。しこたま飲んで酔いが回り、気が付くともう終電間際、急ぎ薄暗い便所でふらつく足元を踏ん張りながら用を足していると、目の前に貼ってあるチョット怪しい「99万円地球一周の船旅」のポスターの記憶が頭の片隅にズーッとあったのです。

一昨年、横浜大桟橋でのオーシャンドリーム号の見学会の時、「この船旅は決められた時間や場所に行く“世界一周の観光旅行”とはチョット違う、目的や寄港地も変わるもこともある旅です、また自分自身へ向かうインナートリップの旅でもあるんです。」と若いピースボート職員に誘われ、背中を押されて、渋る妻を説得して「地球一周の旅」を決心しました。

65歳で退職した去年の4月12日、横浜大桟橋を長男夫婦に見送られ、まだ見ぬ水平線の果て異国への空想、船内生活への興味、船酔いの不安、再びこの大桟橋に帰港した時の自身の変化など様々想像しながら106日「地球一周の船旅」に、暫しの別れの歓声と大量の紙テープが、120㏈オーバーのもの凄い大音圧の汽笛と共に横浜大桟橋を出航しました。

「91回地球一周の船旅」のちょっとブレイク

期間:2016年4月12日~7月28日 106日
訪問:22か国、23寄港地

オーシャンドリーム号:

35,265トン、長さ205m幅26.5m、1981年デンマーク建造、大小のホール、3つのプール、2つのジャグジー、ジム、内科クリニックなど、パナマ船籍の世界一周航路の老外洋船

船内環境:

2,3割が若者、7,8割がリタイヤー組、その内7,8割が単身で乗船、子供から80歳代の老人まで約1,000人の乗客、多国籍クルー300人、ピースボートスタッフ約50人、通訳CC約20人の合わせて、約1,400人が地球を旅します。この大コミュニティが乗客、クルー、スタッフを問わず寝食を共にするので、弥が上にも距離が縮まります。
 中には船内家族と称して、シルバー世代と若者がお父さん、お母さん、息子、娘と距離を縮めて帰港まで船旅を共にする乗客もいました。

キャビンは、若者たちが選択する財布に優しい内側4人部屋、窓側一人、2人部屋、またベランダ、シモンズベッドの豪華キャビンなど財布と応相談です。毎日どのキャビンも、フレンドリーな東南アジア系のハウスキーパーがベットメイクと部屋掃除してくれ、彼らとのスペイン語の片言会話も楽しみです。

3か所あるレストランは、ディナータイムには時折オシャレするサーブ付きのメインレストラン、ハンバーガーやラーメンなどのビュッフェ、どこも無料の為、若い人や大食漢は、はしごする人も、毎日掲示されるメニューを見て好みのレストランを選択するのも日課です。
 基本的に薄味でカロリーも考慮してあるが、新鮮な食材の調達は海外の寄港地なので、野菜やパン、卵まで微妙に国産とは味の違いが感じられます。

やはり気になるアルコール環境は、ウクライナ人ピアニストのBarやフィリピンバンドが演奏するkaraoke Bar、ホッピーや芋焼酎、枝豆、寿司など日本のメニューと変わらない居酒屋、水平線に沈む夕日を肴に船尾のテーブルで傾けるジョッキもまた格別です。
 船内で飲むアルコールは有料ですが、寄港地の免税店、スーパーなどで買ったワインが1000円、ウイスキー2000円で各Barやレストランにキープ出来ます。また船内アルコールはNoTaxの為、「左利き」には案外懐に優しいです。
 船で知り合った乗客、通訳、スタッフが文化交流につい盛り上り深夜になっても、終電は気にすることなく、ふらつく足元でも2,3分でベットにたどり着けるのは船旅の特典です。
 こんな好環境?に恵まれ、私の場合、この航海でウイスキーと焼酎が十数本?、胃袋へ吸収されたと記憶しています。

次回は、船内の様子と特筆すべき寄港先の事を報告したいと思います。

(伊藤 博)


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