2015年11月1日 第147号  前 目次 次
新国立劇場 技術セミナー 新周波数帯RM/IMEとLED・携帯抑止装置との共用実験について
日 時平成27年10月9日(金)午後13時30分~18時
場 所新国立劇場 オペラ劇場
主 催(公財)新国立劇場運営財団
共 催(一社)日本舞台音響家協会/公共劇場技術者連絡会/
(一社)特定ラジオマイク運用調整機構/(公社)劇場演出空間技術協会/
(公社)日本照明家協会
協 賛シュア・ジャパン・リミテッド/ゼンハイザージャパン(株)
日本テックトラスト(株)/ソニービジネスソリューション(株)/
パナソニックシステムワークス(株)/(株)オーディオブレインズ/
ティアック(株)/(株)マクロスジャパン
技術セミナー タイムテーブル
  • 13時30分 開始
  • 13時30分 主催者挨拶と進行説明
  • 13時40分 LEDの基礎講座
  • 14時10分 LED RM/IEM 共用実験
  • 15時30分 休憩
  • 15時40分 携帯抑止装置の基礎講座
  • 16時10分 抑止装置とのRM/劇場無線装置との共用実験
  • 17時00分 TVWSチャンネル検索と多チャンネルプランについて
  • 17時10分 質疑応答
  • 17時30分 終了

はじめに

新国立劇場 伊藤部長より 開会の挨拶があり、つづいて日本舞台音響家協会 松木氏より技術セミナーのタイムテーブルとテストの進め方についての説明があった。

第一部

1.LEDの基礎講座

(公社)劇場演出空間技術協会( JATET ) 渡辺氏、山内氏よりLED照明の基礎講座として、照明用光源の歴史からはじまり LEDの誕生、発光ダイオードの原理、特徴などの解説からLED機器のノイズとワイヤレス機器との干渉を探るというテーマで、LED機器のノイズトラブル例やノイズの種類、LED照明のノイズ測定例などの説明を受けた。
 また、障害事例として東京三光 亀井氏より帝国劇場や大阪 梅田芸術劇場での報告があった。

2.LEDと RM/IEM の共用実験

舞台中央に設置されたLED照明機器やLEDパネルとのラジオマイク・イヤモニターの干渉実験では、アナログ機器とデジタル機器を2つのグループに分けてその結果を検証した。

2-1 初めにアナログチームが実験を行い、シュアジャパン 井上氏が解説をした。

( 担当者シュアジャパン 井上氏、ゼンハイザージャパン山本氏、日本テックトラスト小寺氏 )
 評価条件 アンリツのスペアナのレベルを基準とする
 各社ともに無指向性アンテナを2本舞台上に設置。受信機までの同軸ケーブル5C2V、LED機器電源ONで約20dB スペアナのノイズレベルがUP、ノイズレベルはピークで約-77dB、ゼンハイザーの2ピースを仕込み、舞台上でI/N比 約20dBゲインがあることを確認して舞台袖からバックヤードに向かうが、程なくノイズが乗り運用の限界に達した。
 同地点にてLED機器をOFFにするとノイズは無くなり、運用可能状態となった。
 アンテナを指向性(指向角度 約100度)に変更。LED機器との干渉を軽減するため角度を調節し同様に舞台袖からウオークスルーテストを行うが、無指向性アンテナでノイズの乗った地点はクリアーした。

2-2 テスト機をイヤモニに変更

ゼンハイザージャパン山本氏よりコントロールソフトウェアーのワイヤレスシステムマネージャーの解説があった。
 テスト条件は、アンテナケーブル同軸50mを付け、無指向性アンテナはステージ袖に設置。LED機器ONでイヤモニ受信信号にノイズあり、アンテナを指向性アンテナに交換。角度を補うことでノイズの軽減を確認した。
 また、LED照明の機器をハーフ50% フル100% で呷るテストを行ったが、ノイズが乗ることはなく、以前の照明機器より進化していることを確認した。

 

2-3 デジタルチーム

( SONY諸林氏、Shure 井上氏、オーディオブレインズ山崎氏、ゼンハイザー山本氏 )

アンテナケーブルはアナログと同様に5C2V。
はじめに、SONY諸林氏がコントロールソフトの見方を解説、表示レベルはdBu (D/U比で表示) LED機器からのノイズはスパイク状にスペアナで見ることができた。ノイズのピークは周波数で698.000MHz、 ピークレベルで-30dB位の値を示していた。


ベイヤーダイナミクス オーデイオブレインズ 山崎氏よりコントロールソフトの説明があり、ベイヤーダイナミックスはWebブラウザータイプで移動体端末などからの利便性の高さを述べられていた。


SHURE シュアジャパン 井上氏より解説がありLED機器からのノイズレベルは-70dBm位あるが、デジタルなので送信機をOFFにすると受信機からノイズは出力されないとのこと。次に送信機をONするが D/U比 約20dBを確保することができれば大丈夫とのこと。
 アナログと比較するとデジタルはかなりノイズに強く、舞台袖からバックヤードに入るも持ちこたえる感じを得た。



 ノイズ対処法
  1. TVWS帯ならばノイズのある帯域を避ける
  2. 指向性アンテナを選択してノイズ源からの影響を少なくする
  3. ブースターは使用せず、ノイズを増幅しない

2-4 1.2GHz帯チーム

 ( パナソニック鈴木氏、SONY 諸林氏、Shure 沢口氏 )

パナソニック鈴木氏より1.2GHz帯ラジオマイクについての解説を頂いたが、今回のLED機器からのノイズを1.2GHz帯機器は何れも影響を受けることはなかった。

総評

 JATET 映像部会 会長 為ケ谷氏(タメガヤ)より
 今回のこのような実験は音響機器についても映像機器
 に於いても照明機器も、ひとつのシステムとして考えて
 対応することは、とても大事であるとの総評を頂いた。


第二部

1. 携帯抑止装置の基礎講座

(株)マクロスジャパン 滝川氏より携帯抑止装置について解説された。
 抑止装置は会場であるオペラ劇場プロセミアムに4台設置し、事前テストを行った。
 ソフトバンクの携帯電話の帯域から順に、au, NTT docomoと抑止装置を動作させ通信圏外の環境を参加者全員で確認した。
 抑止装置は現在、日本とフランスのみ実用化され、運用に関しては無線局免許と無線従事者の資格を必要とされているとのこと。
 過去事例として滋賀県びわ湖ホール舞台担当押谷さんより、B帯ワイヤレスと抑止装置との干渉例が報告された。


現在の問題点

TVWS帯620~660MHz帯に 相互変調が出る旧タイプがある、携帯電話の1.4GHz帯と2.1GH帯の相互変調の1/2波長のところで、620~660MHzのところに変調ピークがでる古いタイプの物がある。
 新たなる現行周波数に対応した対策品については、問題はなくなった、国内納入数180台12月までに対策品との入れ替え作業を行う。

1-2  抑止装置とのRMとの共用実験

マクロスジャパン滝川氏、ゼンハイザージャパン山本氏、抑止装置からの影響かどうかを切り分ける方法として、アンテナ位置、アンテナ方向、S/Nを確保する。

実験機 2ピース仕込みタイプ

 プロセにある抑止装置に向けた受信アンテナ高を変更( 4mより少しずつ下げ、ノイズの減少を確認 )
  対応策としては、アンテナ位置を変更することで軽減することができる。

2.TVWSチャンネル検索と多チャンネルプランについて

特ラ機構 甲田より はじめに運用連絡申請に於けるお願いとして、チャンネリストにある名称で申請票に記入をして頂きたい。
 また、留意事項等不明な点は特ラ機構にお問い合わせ頂きたい、など連絡票の記入例などをもとにお話しした。
 新たな会員サービスであるTVWS帯チャンネルリスト検索やチャンネルプラン作成システムは時間の関係上やや説明が駆け足になったが、最後は早めの運用連絡の提出をお願いして、締めくくった。

3.質疑応答

NHKメデイアテクノロジー井野さんより
 LED機器等のノイズ基準などについての標準化など質問されたが、今後の検討という形となった。

4.主催者挨拶

最後に主催者を代表して新国立劇場 技術部 副部長 渡邉氏より挨拶がありテスト会を無事終了した。

 
 

以上
特定ラジオマイク運用調整機構 甲田乃次


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