2015年3月1日 第143号  前 目次 次
特別レポート
 スマートフォンや携帯電話をはじめ、放送、公共・交通機関などあらゆるところで電波は活用されています。もちろん「特定ラジオマイク」も電波を使ったシステムです。電波は私たちの生活や仕事に必要不可欠なものだけに、混信・妨害のない良好な電波環境を維持していかなくてはなりません。
 そこで、電波行政を担当する総務省やその地方支分部局である総合通信局では、無線局等から実際に発射されている電波を受信・測定すること等によって、電波を監視し、無免許などの不法な無線局には必要に応じて警察への告発や行政指導を行っています。
デューラス・イメージ図
各地に設置されたセンサ局では、対象とする電波の到来方向等を測定。そのデータは総合通信局内のセンタ局へ集約される。センサ局ごとの電波の到来方向である方位線が、地図上で交差した位置が電波の発射源と推定できる。これらのデータを基に、現地へ不法無線探索車を派遣して、迅速に正確な発射源を特定していく。ちなみに私たちの納める電波利用料も、これらの設備の整備に使われている。

25~3,000MHzを24時間監視

 今回、関東総合通信局(東京都千代田区)にて、電波監視の要となるシステム「DEURAS(デューラス)」を見学させて頂きました。
 DEURASとは、全国357か所に設置された電波測定設備「センサ局」などを、各総合通信局に設置された「センタ局」から遠隔操作して、センサ局が受信した電波をモニター、電波発射源の方位などを測定することによって、不法無線局などの位置を特定するための設備です。関東総合通信局管内には、57か所のセンサ局が設置されており、25~3,000MHzの電波について、24時間365日の監視を行っています(0.3~30MHzについては、神奈川県三浦市にある三浦電波監視センターで実施)。
 センタ局のある監視室内には、電波の発射源を表示できるディスプレイが設置された操作卓がズラリと並んでおり、常時、数名で監視を行っています。また関東総合通信局では、全国のセンサ局を遠隔制御することができるので、広範囲に移動する不法無線局について管轄をまたいで探知・追跡することが可能です。
 実際に電波の方向探知のデモとして、成田国際空港(千葉県成田市)で使われている航空無線の電波を探知して頂いたところ、各センサ局から送られてきた電波到来方向のデータが処理され、ディスプレイの地図上に成田国際空港が電波の発射源であることが瞬時に表示されました。実際の不法無線局の電波は移動し不安定であることも多いことから、後述の不法無線探知車と連携して位置の特定を行っているということです。
 DEURASは不法無線局の位置の特定ばかりでなく、船舶や航空機からの救難信号の方向探知にも活躍しています。ただ、これらは廃棄された機器からの“誤発報”であることが多く、関係機関は悩まされているとのことです。
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関東総合通信局内にある監視室で、全国各地のセンサ局を遠隔制御可能な端末について説明を受ける当機構メンバー(左から藍技術委員、田中理事長、橋本技術委員)。
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エルグランド(日産)をベースにした「DEURAS M(不法無線探索車)」。テレビ局の中継車のような外観をイメージしがちだが、実際にはアンテナも目立たず、外観は普通のワンボックスといった感じ。
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車内には、監視室内のセンタ局と同等の機能を有す端末とモニター用受信機などが並ぶ。監視室と連携を取りながら、不法無線局の位置を追い込むことができる。

DEURAS Mで発信源を特定

 固定のセンサ局をカバーするために「DEURAS M(不法無線探索車)」が活用されています。この車両には、電波の方向探知処理装置と各センサ局の遠隔制御装置を積載。測定周波数範囲は25~2,000MHzと広く、センタ局とセンサ局の両方の機能を有しています。アンテナ類は目立たないように設置されており秘匿性は抜群。外観からはそれと分からないので、探索対象へ気付かれることなく、不法電波の発射源を特定することができます。
 関東総合通信局には2台の「DEURAS M」が配備されており、サミットといった国家行事にも派遣され、重要な通信への妨害等の警戒にもあたることがあるそうです。
 以上のような最新の電波監視システムによって、快適な電波環境が守られています。特定ラジオマイクという電波を使う私たちだからこそ、知っておく必要があるといえるでしょう。
※今回の見学については、当機構事務局と技術委員会のメンバーが対象。
協力/総務省関東総合通信局電波監理部
(石川)


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