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Inter BEE 2011 (第47回)国際放送機器展
会 期2011年11月16日(水)〜11月18日(金) 3日間
会 場幕張メッセ(展示ホール 4〜8)
主 催JEITA 一般社団法人 電子情報技術産業協会
後 援日本放送協会、社団法人 日本民間放送連盟
運 営一般社団法人 日本エレクトロニクスショー協会(JESA)
出展状況日本 334者、海外(34ケ国・地域)466者
海外 USA 183者 イギリス61者、イスラエル28者等
3日間入場者数  30,752名 (主催者発表)

 1965年にスタートしたインタービーは今年で47回目、NABやIBCと並ぶ世界三大放送機器展のひとつとして、国内外の注目を集めています。毎回、同時開催としての、民放技術報告会、各種フォーラム等にも特徴があります。
 今回、inter BEE チュートリアル・セッションの一つとして、当連盟技術委員長の宮前真二氏が17日に講演しました。内容は別項でお知らせします。

 今回のこの機器展は大きく二つのテーマがありました。
 地上デジタル放送の音声の問題と映像技術の多様化によるニーズに対して、各メーカーはどのように対処していくのか、大いに興味あるところです。
 ここ数年の映像製作の環境の変化は恐ろしいほどのスピードで進化しています。
 数年前のアメリカのレッド・デジタル・シネマカメラの登場、そして最近の3D、4Kのハイクオリティ映像があり、機材の高品質化、低価格化と、それまで放送、映画と棲み分けがあったのが、大きくデジタル映像記録というひと括りになってきました。
 懐かしいソニーのD2VTRのメンテナンスが2016年3月で終了します。
 各放送局は膨大な量のD2テープを保有しており、そのファイルベース化の設備投資をせまられています。その記録先はブルーレイディスクが有力視されているようです。
 一世を風靡したD2も有終の美を飾ることになりました。しかしまだ5年ほどありますが。いよいよテープは無くなるのでしょうか。この機器展を機に放送局はファイルベース化に進むでしょう。しかしシステム導入に時間とコストが莫大にかかるため難しいところです。(ファイルベース化:テープやフィルムの画像等をデータ化する)
 撮影機器ではソニーの4K、CineAltaカメラ「F65」はもっとも注目された製品で、35ミリフィルムの映画製作の置き換えを狙うそうです。すでに4Kデジタル映画の上映システムは全国で600スクリーンが導入されています。ソニーは4Kの撮影から編集、さらには上映まで実現することでしょう。

 皆さんは、一眼レフカメラで撮影した映画をご覧になったことはありますか。そうです、一眼レフカメラなんです。私は2011年春、キャノンのEOS7Dを使った、大森一樹監督作品、「津軽百年食堂」を見ました。予備知識がなければ、アリフレックスの35ミリで撮影したものと思うことでしょう。
 写真のカメラは、開発中のデジタル一眼レフカメラで「津軽……」を撮ったカメラと同じではありませんが、4K対応です。低予算映画の救い主かもしれません。アクセサリーをつけたら20キロにもなりそうなアリフレックスなどからは想像もできない軽さです。これでも映画が撮れるのです。不思議な時代です。

ラウドネスサミット東京

 ARIB(電波産業会)ではデジタルテレビ放送番組のラウドネス運用規定を策定し、それを基に民放連ではテレビ放送の音声レベルの運用基準を制定しました。2012年10月から適用することになりました。
 それを受けて、話題に上っているラウドネスメータは、今回はシンポジウム、ワークショップ、セッションと大々的に取り上げられ、それぞれの分野に分かれて行われていました。
 4ホールのセミナーでは、SCアライアンスのブースの背面の平床に椅子が並べられていた。地デジに切り替わり、話題になってきたものです。アナログ時代でも音量問題はありましたが、デジタル放送になってクローズアップされてきました。誰も予測しなかったのでしょうかね。生放送などで挟み込まれる素材やCMなどの音量レベルは調整されているのかどうかは知りませんが。オーディオの世界ではデジタルはジギタリスに通じる、ということは随分前から言われており、両刃の剣であることは、現場の皆さんは良くご存知だろうと思います。昨年同様、今回も多数の製品が出品されていました。差し迫った問題であることは確かです。

 タムラ製作所は、「ナチュラルなデジタルの時代へ」というコンセプトのもとで展示。ミキサー卓のフラッグシップモデル「NT880」は人気がありました。アナログ卓では想像も出来ない大容量ルーターを搭載し、最大1024chの音声処理が可能とのこと。
 デジタルワイヤレスマイクはB型をはじめ、A型システム、お得意のインターカムも展示していました。

 ゼンハイザー・ジャパンでは、小さなスタジオからのギターの弾き語りをヘッドホンで聞かせていた。私が現役時代愛用した懐かしいMKH416も現存しますが、もっと軽く、もっと短い8060が使い勝手のよいガンマイクとして人気がありました。風防はあいかわらずのスタイルで、これはほとんど進化が止まった感じです。スタイルのよいワイヤレスマイクも勿論展示されていた。
 以上概略です

覚書

 ラウドネスメータとは、音声信号のパワー表示メータで、聴く人の感覚にマッチするそうです。
 デジタルになって、アナログのようにはいかなくなりました。アナログでは変調することにより音のレベルにある程度の制限が加えられていたのですが、デジタルはそれがない。アナログ以上に、音の問題が生じるわけです。各番組間、CMと番組の音量差などは日本だけの問題ではなく、アメリカでも視聴者の苦情があり、2010年12月にCMの音量規制法CALMが成立しました。
 番組の平均ラウドネス値(ロングターム・ラウドネス値)は、番組交換時の固有の値として表示されます。また3秒間の平均ラウドネス値、400ミリ秒の平均値も表示されます。現場の経験により、スムーズにミキシングが行われるように期待したい。アナログ時代は放送局の送り出しマスターに、コンプレッサー、リミッター、チョッパーなどが入っていたと思いますが、デジタル放送になり、番組間のレベル差、素材のレベル差、CMのレベル差などがクローズアップされてきました。
 アナログ時代のCMの音量競争はあまりに非文化的でした。主婦連の直訴もありました。特に低予算のCMに多かった。あの時代は止むを得なかったと思います。私は身をもって体験しております。大真面目に音量問題を解決しようと多数の人たちの協力を得、真剣に取り組みました。しかし多少高値でしたがピリオドを打たざるを得ませんでした。

取材 写真 文とも 大野