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平成22年特ラ連技術セミナー「ワイヤレスマイク デジタルとアナログの混在使用実験」

日  時: 平成22年11月29日(水)  14:00〜16:00
場  所: 北とぴあ ペガサスホール

平成22年度特ラ連技術セミナーは上記の日時、場所で行われました。参加人数は一般から44名、技術委員が7名、事務局から6名の計57名の出席でした。以下、セミナーの内容をご報告いたします。

開会挨拶:八幡会長
 私たちが今回、実験をしようとしているのはアナログとデジタル、やがてはデジタルに移行しなければいけない、ということを前提としまして、いろんな問題を抱えながら、どうやって上手くやってゆくか? ということで、アナログが良いとかデジタルがいけないとかを確認しあうのではなく、両方一緒にあるためには、どのような問題を解決してゆかなくてはならないか。
というようなテーマでございます。−中略― 
 今日の実験会、2,3年すると、ああ、ああいうこともあったなということですが、体験として非常に貴重なものになるのではと思っております。何卒よろしくお願いします。
 
宮前技術委員長
 今日は実験と言うことなので皆さん、できれば参加していただけると非常に助かるのですが。
 それとあらかじめ申し上げておきますけれど、今回の機材はあくまでも一つの例、デジタルとアナログが全てこういうふうになるものでは無いと思っています。そうは言ってもだいたい同じような造りを皆さんされているので、同じような結果になるとは思いますが、多少の誤差、造り方の違いで、振る舞いがちょっと違うということもありますので、その辺はご了承願って見ていただければと思います。
 
干渉実験
 干渉実験を3ヶ位、干渉したときにどちらにどのような音が出るかを実際に聴いて頂き、こんなもんだと思っていただければと思います。

多チャンネルの実験
 デジタルは10波、アナログ6波が同時使用できることは、いろんなところで皆さん、実験とかに出られていらっしゃると思いますので、見たことがあるとは思いますが、今回はこの中の何波かをデジタルにするとか、何波かをアナログにするとかという形で、本当に混在させるという形で実験をやってゆきたいな思っています。で、そうしたときにどんな感じで使えるのかな?というふうなイメージを持ってもらえればと思います。
 
イヤモニターとの干渉
 最後にイヤモニターを使ってデジタルの送信機、デジタルの受信機がどのようなものかみていただきたいと思います。

 最初にお断りしておきますが、今回、機材の関係でB型の機材しか揃えなかったものですから、B型の方で実験をさせてもらえます。たぶんA型もB型もほとんど造り方は同じですので、干渉とかの振る舞いは同じになるかと思います。デジタルの場合B型の方が帯域が狭いということになりますので、A型の方がこれよりちょっと広い、と言うところだけちょっと違う、ということを理解していただければと思います。
以上、「干渉実験」、「多チャンネル実験」および「イヤモニとの干渉」について、宮前技術委員長の前説で実験が始まりました。
 
実験
  1. 125KHz
    図のようにチャンネルがかぶっている状態なので、多分切れる。
    実際どうやって切れるのかを見て行く。
    結果:デジタルが入るとアナログが聴こえなくなる。どちらも切れている。
  2.  
  3. 250KHz
    使用できるがデジタルをアンテナに近づけると干渉を起こす。
    (アナログに白色雑音)実際にはアナログの方が最大変調になったとき帯域が広がるので影響が出てくるのではないか?
    結果:使えると言えば使える。
    切れるといえば切れる。
  4.  
  5. 375KHz
    アンテナに近づきすぎるとデジタルは無音になり、アナログは白色雑音。
    デジタルは切れるとき不要な音が出ないので原因が不明となるかもしれない。
      結果:使用可能
  6.  
  7. 多チャンネル
    1. アナログ6波使用のところ、1波をデジタルに変えてみる。
      最初はアナログの2番目をデジタルに変えてみる。
    2. 結果:アンテナにデジタルマイクが近接するとアナログの1番目にノイズが入る。
    3. 次にアナログの3番目をデジタルに変えてみる。
      結果:いろいろな位置を動き回ってみたが、この形では問題無く使用できる。
    4. 9波同時使用
      アナログ5波にデジタル4波を入れてみる。これはアナログの方の3次相互干渉でダメになる可能性がある。
      結果として思ったより良くて、干渉無く使用できる。
    5. 10波同時使用
       デジタル10波使用の中にアナログを4波を入れたというイメージ。
      3次相互変調で厳しいのは真ん中であるので、敢えてアナログを外側に配置してある。
      結果としてはアナログのフィルター特生が良く、10波使えることになった。実際に使用するときは実験をしてみて、メーカーによっても違うので、要注意。
    アンテナは2本でデバイダーでアナログ受信機、デジタル受信機に振り分けている。条件としてアナログもデジタルも同じである。(参考資料)
  8.  
  9. イヤモニターとの干渉
    1. FPU4帯のHiにイヤモニをおいた時。
      マイクがB帯なので、これからの実験のうち一番きつい状態。
      解りづらいので、イヤモニで聴いている状態をスピーカーから出して、どんな感じでノイズになるのか?
      イヤモニ用の音源に音楽を使用。
      送信機はデジタルとアナログをそれぞれ実験。イヤモニがアンテナに近づくとノイズが出る。デジタル、アナログで状態に変わりはない。
    2. FPU4帯のLoにイヤモニをおいた時
      実際の歌手が使うような持ち方をしてみたが問題はない。アナログに変えてみたが同様であった。マイクの送信機のボデイとイヤモニの受信機のボデイを合わせるようにつけてみたが、影響はない。
    3. FPU2帯のHiにイヤモニをおいた時
      ボデイをつけてもノイズはない。デジタル、アナログ同様。
    4. FPU2帯のLoにイヤモニをおいた時
      デジタル、アナログ同様に全く問題はない。
  10.  
質疑応答
Q:先ほどの実験で250KHzではアンテナに近接したときノイズが出ていたので、この間隔では使用できないのではないか?
A:今回、受信機のフィルターの性能が良かったので、アンテナにマイクをつけるような状態にしないとノイズがなかったが、基本的にはこの間隔では使用できない。
Q:デジタルの場合チャンネル内の帯域が拡がるので一つの場所での使用本数が減るのではないか?
A:アナログでは300m離さないと同一チャンネルのWLは使えないが、デジタルでは150m離すと同一チャンネルのWLを使うことができるので、いくつもの会議室などがある場合、デジタルの方が多くの本数を繰り返し使用できる。
Q:携帯電話の基地局から電波が干渉を起こしているのでは?
A:今までそのような形の報告は受けていない。今のところ800MHzに携帯電話の基地局は無いが、今後どうなるかは分からない。
 
閉会挨拶:田中理事長
 長時間どうもありがとうございました。皆さんそれぞれお仕事がお忙しい中でこのようにたくさんの方々に来ていただいて、また、一生懸命お手伝いいただいて実験も滞りなく終わりご協力の皆様ありがとうございました。今後ともこういう有意義な、皆さんが知っておいていただきたいこと、また知りたいこと等ありましたら、引き続き技術委員会セミナーを開いて行きたいと思いますので、最後にアンケートにご感想など書いていただければ幸いですし、次に生かしたいと思っております。
 会長の話にありましたように、アナログとデジタルは共存する機会もまだありますし、今後ともあるだろうと想定しつつも、今、皆さんも新聞その他で見たり聴いたりしていると思いますが、携帯電話会社が我々の持っている800Mをどこかに移してくれないかという議論が出ております。今のところ、分かっている範囲のことで、結論が出ている訳ではなく、これから情報審議会に等に計られる訳ですけれども、今、出ている情報的なことで言いますと、これから2012年にかけて我々の800Mから、居座るのもひとつの手かも知れないし、地デジの空きチャンネル、若しくは1.2Gというところへ移せるものかどうなのかと、このまま残るのも一つの選択肢に含めながら、そういう案が出ております。その結論が見えてくるのが2012年、これから1年かけて、それが我々の手を打てる場所なのか、打てない場所なのかと、いうことも踏まえて、これから議論を詰めて行くことになりますので、皆さん方も仕事の上で何かありましたら、特ラ連にお電話を頂くなり、死んでも800Mを放すのではないよという激励などありましたら遠慮なく言っていただきたいと思います。ここに見えている経営を預かっている皆さん方にしてみれば、使えなくなる、ではどうするのか、あるいは、今はもう古くて陳腐化しているものを、新しいものに買い換えた方が良いのか、もう少し待った方が良いのか、棄ててしまって補償しろと言った方が得なのか、とか。これから特ラ連の中でも議論して行きたいと思っておりますので、で、特ラ連レポートには必ず、理事会報告として掲載してゆきますので、今までも眼を通して頂いておりますけれども、これからも是非眼を通して頂ければ、ということです。放送局のワイヤレスマイクも全く同じ状況です。ですから一応横並び一線で、これから新しいものに、又は800Mにいるにしても、どう展開してゆくかという議論をしてゆきたいと思っておりますので、いろいろ多岐にわたる皆さんの議論をお聞かせください。それではたいへん長い時間、楽しんで頂いた思いますけれど、今後とも混在期を、今日の経験を生かして現場でお仕事をしていただきたいと思います。ありがとうございました。
  
結び
 今回の実験に際しまして「北とぴあ」の方々に多大のご協力を頂きました。最後になりましたが深く感謝いたします。
参考



機材提供
  1. デジタルWLマイク  10ch (株)タムラ製作所
  2. アナログWLマイク  6ch (株)S・C・アライアンス(PA一式含む)
  3. イン・イヤモニター  1ch (株)日本エムエスアイ



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